しいたげられた🍄しいたけ

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【創作】転生したら親鸞だった?(27)第7景【鎌倉編】霊感商法(5/5)

目次 各「その1」のみ クリックで詳細表示

(1) 第1景【現代編】猪飼家のマンションにて(1/6)

(7) 第2景【鎌倉編】車借・捨六(1/6)

(13) 第3景【鎌倉編】馬借・欠七(1/2)

(15) 第4景【現代編】個室病棟にて(1/2)

(17) 第5景【鎌倉編】ボクの無双(1/2)

(19) 第6景【鎌倉編】被差別集落(1/4)

(23) 第7景【鎌倉編】霊感商法(1/5)

(28) 第8景【現代編】ボクシング

(29) 第9景【鎌倉編】地頭・稲田(1/2)

(31) 第10景【現代編】哲学者

(32) 第11景【鎌倉編】心霊教ふたたび

(33) 第12景【現代編】裵〔ペ〕デスク

(34) 第13景【鎌倉編】刺客

(35) 第14景【現代編】守衛

(36) 第15景【鎌倉編】大団円(1/4)

(40) 第16景 鎌倉編の後始末

(41) 終景 現代編の後始末(1/3)

新着お目汚しを避けるため、日付をさかのぼって公開しています。体裁にこだわらず頭の中にあるものをダンブしている、という意味です。 あとからどんどん手を入れる予定です。前回はこちら。

watto.hatenablog.com

 

(主人公「ボク」による語り)

そのあと、ボクは心霊教の女性たちに取り囲まれるようにして、教団本部の外に追い出された。文字通り「つまみ出された」という格好だった。

マメさんはイネさんの娘ということで、敷地内に残ることが認められた。ただし敷地の内庭にとどまることが許されたのみで、屋敷の中には入れてもらえなかったようだった。

つまり3人がバラバラにされたということだ。これも洗脳宗教の常套手段である「分断」だろう。

 

意気消沈の極みだった。

どうしたらよかったのだろう? カメさんや鶴御前との論争に、軽々しく乗ってしまったことが間違いだったのだろうか? イネさんは、明らかにマインドコントロール状態にある。まずはイネさんの脱・洗脳を試みるべきだったろうか?

しかしタイミング悪く、初対面からほどないところへカメさんがやってきたのだった。時間的余裕は、ほとんどなかった。

 

頭を掻きむしりたくなるほどの悔恨の感情とともに、そんなことを考えながら紫雲寺への帰途を歩んでいると、正面から2人連れの男たちがやってきた。

大柄な男と、少し小柄だが敏捷そうな男だ。

やや車借馬借の捨六さんと欠七さんを思わせるところがあったが、彼らとの大きな違いは、周りにすさんだ空気を漂わせていたことだ。人相も悪い。

 

考え事をしていたので、間近に接近するまで気がつかなかった。彼らから明らかに敵意のこもった視線を向けられたので、やっと気がついた。

ボク「何かご用ですか?」

男たちはニヤニヤ笑いながら、黙ってさらに近づいてきた。嫌な笑い方だ。

荒事師というやつだろう。

「心霊教の人ですか?」

ボクは左足と左肩を同じ方向に出し、つま先で立ち膝を落とした。

いっしゅん考えて、さらに両こぶしを握りアゴの高さまで持ち上げた。

ファイティングポーズだ。

21世紀の人間が見たら「カッコつけてダサい」と思われるに違いないが、この時代の人間には、わかるまい。見慣れない恰好をしていると思われるだけだろう。

 

そう、ボクはボクシングをやっている。

といっても近場のジムの、ただの練習生だ。ボクササイザーと言うほうが早いだろうか。

作家の職業病である運動不足をちょっとでも補おうと思って始め、ずいぶん長いこと続けている。

それでも何年も昔、妻と二人で盛り場を歩いていたときに、若いチンピラにからまれたことがあった。

「かわいいね」とか何とか言って妻に近づいてきたチンピラとの間に、割って入ったのだ。

そのときは拳を構えはしなかったが、やはり同じ側の足と肩を前に出し、膝を落とした。

そうしたら、チンピラのすぐ後ろにいた兄貴分とおぼしき男が「おい、やめとけ」と口を出した。

ボクは決して強くなんかないが、少しはややこしくなりそうだということが、ボクの構えを見た兄貴分にはわかったようだ。じっさいボクが時間を稼げるだけ稼ぐから、妻には逃げて警察を呼ぶように言うつもりだった。

 

幸いそのときは、それで済んだ。しかしこの男たち相手には、見かけだけでは通用すまい。

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果たして小柄な方の男が、ものも言わずに掴みかかってきた。問答も何もあったものじゃない。

ボクシングは、絶対にケンカに使ってはいけない。それはわかっている。だが今はその "絶対" さえ通じない非常事態なのだ。

ボクはバックステップで男の腕をかわし、左の掌底で男の顔面にジャブをくれた。

グローブをはめない拳でパンチしたら、死なせてしまうかも知れないので、手加減したつもりだった。

腰の回転と腕の動きがシンクロする、理想的なジャブになった。

男は目を剝いた。

ワンツーの右フックは、自然に出た。練習で体にしみ込ませていた動きだ。

やはり掌底を使った。ちょうど手のひらが相手のアゴを包む形になり、相手の頭蓋骨は頸椎を中心に半回転した。

小柄な方の男は、たちまちその場にへたり込んだ。脳震盪を起こしたのだろう。気の毒だが、しばらく立ち上がれまい。

 

大柄な方の男は、いっしゅん驚いた表情を浮かべた。その表情はみるみる怒りに変わり、「うおぉぉぅっ!」と恐ろしいうなり声を上げながら、ボクめがけて握り固めた両手を拝み打ちに振り下ろしてきた。

動体視力を鍛えることは、ボクシングのトレーニングの基本だ。男の動作は、スローモーションのようによく見えた。

ボクはダッキングで、拝み打ちをかわした。ダッキングとは上体をかがめて相手の攻撃を避けることである。

ちょうど相手の腕と胴の間合いに入った。ボクは相手のみぞおちをピンポイントで狙って、右ストレートを放った。

今度は体勢的に掌底というわけにいかない。ほんらい「打ち抜け」と指導されているところだが、それをやるとマジで殺してしまう。腕を固定し、相手の突進する勢いを受け止めるだけにとどめた。

それで十分だった。どんなにぶ厚い筋肉と脂肪で守られていても、みぞおちは人体の急所中の急所だ。大柄な男はそのまま前方に転倒して「ぐえぇぇぇっ!」と苦悶の絶叫を上げながら、のたうち回った。

 

ボクは後ろを見ないで逃げた。走って紫雲寺へと急いだ。

とりあえず、この難は逃れたようだ。

しかし、決してこれで終わりではないという確信めいた予感もあった。極めてイヤな予感である。

あの荒事師たちは、油断していたから、もっとありていに言うとボクを舐めていたから、ああなったのだろう。次はそうは行くまい。

心霊教本部で鶴御前たちを相手にしたとき、彼女らはボクの手持ちのカードを知らないと考えた。

しかしそれはお互いさまで、ボクは心霊教や鶴御前がどんなカードを持っているか、まったく知らないのだ。いましがたの二人組の荒事師は、そのカードの一枚にすぎないだろう。

思えばあの鶴御前の、自信に満ちた表情が不気味だった。彼女はいったい、次にどんなカードを切ってくるのだろうか…?

(この項続く)

追記:

続きです。

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