- 作者: 三枝充悳
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1990/01/22
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だが…おのおのの項目が非常にコンパクトにまとめられている感があり、結晶のように抽象度が高く、視線が活字の上を上滑りしがちである。
「浄土経典」(p155〜)であるとか、「唯識」(p173〜)であるとかに触れられた箇所にくると、ああ、ここは少しはわかる、とほっとしたような気分になる。前者に関しては『浄土三部経の真実 (NHKライブラリー (4))』他を読んでおり、後者に関しては『やさしい唯識―心の秘密を解く (NHKライブラリー)』を読んだばかりである。いかな読んだ内容を忘れるのが早い私でも、多少は「そう言えばそんなことが書いてあったな」という記憶が残っている。
思うに本書は、「入門」と題しているけど、内容的には「総論」あるいは「原論」とでも言うべきものなのかも知れない。けだし「各論」が別に必要なのである。
なお本書で初めて知った内容のうちでは、次の箇所が印象深かった。初期仏教では、人類に共通の形而上学的なアポリア(難問)を、「十難」と称したという。
すなわち、
a (1)世界は、常住(世界は時間的に無限)
(2)世界は、無常(世界は時間的に有限)
b (3)世界は、有辺(世界は空間的に無限)
(4)世界は、無辺(世界は空間的に有限)
c (5)身体と霊魂とは、同一
(6)身体と霊魂とは、別異
d 真理達成者(如来)は、死後に
(7)生存する
(8)生存しない
(9)生存し、また生存しない
(10)生存するのでもなく、また生存しないのでもない
(p69)
aとbに「〜でありまた〜である」「〜でもなくまた〜でもない」という反復を加えて「十四難」とする用例もあるという。
釈尊は、これらの難問に人々からくりかえし解答を迫られたという。
それにさいして、釈尊はつねに無記〔むき〕(アヴィヤータカ、アヴィヤークリタの訳)を通した。
どのような誘導があり、あるいは誹謗や中傷などがあっても、釈尊はそれに応ぜず、あくまで沈黙を守りつづけたまま、なんの答えもしていない。これを「十難無記・十四難無記」と称する。なぜ答えないのか、それはこれらの難問がすべて形而上学にかかわり、形而上学志向ないし関心に基づく問題設定にほかならないことを、釈尊は充分に徹視していたが故に、と諸資料は語る。
(p70〜71)
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