しいたげられたしいたけ

空気を読まない 他人に空気を読むことを求めない

らも中毒

また一冊。

『バンド・オブ・ザ・ナイト』(講談社文庫)

バンド・オブ・ザ・ナイト (講談社文庫)

バンド・オブ・ザ・ナイト (講談社文庫)

著者が一回目の会社勤めを辞めて、失業保険で生活していた頃の物語。フィクションの体裁だが、書かれていることは実体験を下敷きにしていると思われる。なにせ主人公の名前が「大島ラム」なのだ。
主人公夫婦の住む自宅は、京大出の無職とか、学校に行かなくなった国費留学生とかの溜まり場になっている。彼らが何をするかというと、病院をはしごして集めた睡眠薬を、ガリガリとかじりながら酒で飲み下すという、阿片窟さながらの状況になっている。
時おりマリファナや覚醒剤など、はっきりと非合法なドラッグを使用している状況も描かれる。
さらに主人公が、四十万とか五十万とかの他人の金を預かって、それをどうにかしてしまうというエピソードが挿入される。
主人公の家は、仲間内から「ヘルハウス」と呼ばれるが、まさに地獄さながらの様相である。
しかし不思議と嫌悪感はない。主人公は作者の分身なのだから、のちに人気作家として少なくとも経済的な苦境からは脱出することを知っているからだろうか?
自分のことを振り返ってみると、私はドラッグどころか酒もタバコもやらないが、ドラッグをやらなかったのは、たまたま出会う機会がなかったからにすぎないような気がする。酒とタバコをやめたのは、多分内臓が弱いので、体質に合わなかったからに他ならない。酒はともかくタバコは今でもたまに吸うと旨いから吸えるものなら吸いたい。吸うと腸に来てたちまち下痢をするのだが。
著者は医者から「野蛮なくらい丈夫な内臓」の持ち主と言われたとどこかで書いていた。
挫折はどこにでも転がっているし、挫折したときの「ヘルハウス」の住人たちと我々との距離は、意外なほど遠くないという予感がある。