早春の花としてカワヅザクラが人気のようで、一本または何本かであればそこかしこで見かけるようになった。だが品種の発見が1955年(ウィキペディア による)と比較的新しいためか、愛知岐阜近辺では名所と呼ばれるほどの場所はあまり知られていないように思う。本家の静岡県には多いんだけど。
だが何かのはずみで検索したら、愛知県一宮市の萬葉公園というところがヒットした。去年はヒットしなかったんじゃないかな? Googleマップを見たら実家から車で30分ほどの場所である。近いじゃないか!
検索結果を調べると無料駐車場があるようだから、ナビを頼りに行ってみた。
案内図。
複数の神社や寺院の境内や、またグランドなどを寄せ集めた複雑な敷地である。
マップには「萬葉公園」の他に「戸苅河津桜園」というマーカーも表示されるが、なぜかこの語を単独で検索しても意味のありそうな項目がヒットしない。萬葉公園の一部に、そういう名称がついているのだろうか?
マーカーの位置は、上掲案内図にはショッキングピンクで表示されている。ただし図中には「河津桜」とだけ記され「戸苅河津桜園」という文字は見えないのだが。
和歌を記した立て札が多数立てられていた。公園名のとおり万葉歌だろう。
弊ブログ勝手に恒例文字起こし。ルビある場合は省略します。
つき(けやき)
早来てもみましものを
山城の多賀の槻群
散りにけるかも
高市連黒人
こんな場所が、うちの市内にもある。大蔵池公園というところの万葉の森という遊歩道で、以前に弊ブログで何度かネタにしたことがある。
こちらには、石板の歌碑が設置されていた。木製の立て札より立派かもだが、数はこの萬葉公園よりずっと少ない。
もう何枚か。いらんことを言うと立て札の向こうは墓地である。
あしび
池水に影さへみえて
咲きにほふあしびの花を
袖にこきれな
大伴家持
しきみ
奥山のしきみが花の
名の如やしくしく君に
恋ひ渡りなむ
大原今城
上掲の三枚は駐車場から公園の敷地に入って左側に立っていた。
右側には…
さくら
あしひきの山のま照らす
桜花この春雨に
散り行かむかも
詠み人知らず
さくら
世の中も常にしあらねば
宿にある桜の花の
散れるころかも
久米女郎
駐車場のほうを振り向くと、どうやらここは桜並木っぽい。
ちょっと進んだ右側。
もみじ(かえで)
秋山のもみぢを茂み
惑ひぬる妹を求めむ
山路知らずも
柿本人麿
このあたりは紅葉林なのだろうか? 今は裸木ばかりだけれど。
突き当りまで歩いたところ。
さくら
我が背子が古き垣つの
桜花いまだふふめり
一目見に来ね
大伴家持
あふち(せんだん)
妹が見し楝の花は
散りぬべし我が泣く涙
いまだ干なくに
山上憶良
なかなかカワヅザクラにたどり着けないな。「さくら」の歌は多いのに(無関係
これは突き当りを左に折れ、道路を隔てた住吉社という神社の敷地を覗いたところ。
見事な庭園があった。だが目的地はここではない。
反対側の右方向を示す案内板が立っていた。
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ようやく目的の場所が見えてきた。
河津桜
分 類:バラ科サクラ属 落葉広葉樹
開花時期:2月中旬~3月中旬
花 期:約1ヶ月間
由 来:静岡県河津町に原木があることから
昭和49年河津桜と命名された
案内板の反対側には小規模ながら遊具スペースが。盛りだくさんな公園だ。
桜並木の下の遊歩道。
遊歩道に掲げられていた立て札には、なぜかスギの歌が記されていた。万葉の時代にカワヅザクラはなかったからだろうか?
すぎ
三諸の神の神杉
夢にのみ見えつつ共に
いねぬ夜ぞ多き
高市皇子
敷地の外側の道路から。若い苗木も植えられていた。さらに充実する計画だろうか?
駐車場に引き返す道すがらにはツバキの咲き残りが。
つばき
古瀬山のつらつら椿
つらつらに見つつ思ふな
古瀬の春野を
坂門人足
タイトルに掲げたカワヅザクラは、写真も文章も分量的には少数になってしまった。
この他にも梅園など見どころが他にもある、なんとも盛りだくさんな公園だった。
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