しいたげられた🍄しいたけ

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愛知県の全国ワーストを争う各種統計データについて

去年の年末ごろに、愛知県の交通事故死が、2018(H30)年は16年ぶりにワーストを脱することができるかも知れないというニュースが流れてきた。ソースは探せないか試してみたが見つからなかった。

速報値によると、結局こういういことになったようである。

hicbc.com

一部引用。

 去年まで15年連続で交通事故死者数が全国ワーストの愛知県。昨日までに187人が死亡していて依然ワーストのまま2018年最後の日を迎えました。

 愛知県警によりますと、県内の交通事故死者数はきのう時点で187人と去年より12人減少。2番目に多い千葉県とは1人差となっていました。

 2018年最後の31日未明、春日井市で50代くらいの歩行者の女性が軽乗用車2台にはねられ、さらにこの女性と、女性をはねて車から降りてきた男性が後ろから来た中型トラックにはねられ2人とも死亡しました。

 

ワースト2位千葉県のローカル記事を見ると、この数字が確定したようである。

www.tokyo-np.co.jp

こちらも一部引用。

二〇一八年の県内の交通事故による死者数は百八十六人(速報値)で、前年を三十二人上回った。全国では百八十九人(同)だった愛知県に次いでワースト二位。高齢者の死亡事故の増加が顕著で、高齢者の事故防止を中心とした交通安全対策が急務となりそうだ。

交通事故死は一件一件がこの上ない悲劇であり、数字にすると個々の悲惨さが想像しにくくなるが、つい「年末に驚異の追い上げを見せたか」などと不謹慎な表現が思い浮かんでしまった。運転どヘタクソなくせに運転しなければならない明日はわが身だから、重々慎重にならねば。

 

他に愛知県が不名誉なワースト1を続けている数値としては、「住宅への侵入盗」というのが思い浮かぶ。ドロボウに入られた数ということだ。

住宅を狙った盗難被害の発生状況|愛知県住宅防犯対策協議会

一部引用。

愛知県の住宅を対象とした侵入盗の件数は、年々減少傾向にありますが、平成19年から平成29年まで11年連続「全国ワースト1位」です。
さらに、平成29年はワースト2位との差が約1,300件あり、全国的に見ましても突出した発生が続いています。

 2018(H30)年速報値の報道は、まだヒットしなかった。検索すると第一四半期(1月~4月末)のワーストは茨城県で全国平均の3倍という記事が出てきた。こっちも「驚異の追い上げ」なんぞ見せてほしくないもんだ。

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ときに県知事選が近いということで(2月3日投開票)、立候補を予定している陣営から受け取ったチラシに、次のようなデータが載っていた。なお私は野党サイドの支持者であり、チラシを受け取ったのも野党側候補者の支援集会だったことを、あらかじめお断りしておきます。

元画像が横長だったのでスキャンしたものをそのまま貼ると文字が小さくなるため、表の形状を縦長に変更しています。

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 データ出典は 総務省「統計でみる都道府県のすがた2018」 とのことだった。リンクをたどると、下記サイトより Excel 形式で元データがダウンロードできた。

www.e-stat.go.jp

総務省サイトからダウンロードした Excel ファイルには、チラシの表に載っていた以外にもさまざまな項目があった。

中にはトップテンに入っている項目もあったが、例えば「地元大学への入学者の割合」が1位など「だから何?」的なものが目立ち、一概に教育や福祉関係では低位に甘んじている項目が多かった。悪いデータだけを意図的に取り出しているということではなさそうだった。

集会における立候補予定者支援者のスピーチによると、県の教育・福祉担当者は、特別支援学級の1クラスあたりの予算が全国有数であることをアピールするが、それは限られた学校にしか特別支援学級を作らないためで、生徒はマイクロバスで通学するなどむしろ負担になっているとのことだった。

そんな見え透いた言い訳を、本当に県の担当者が口にしたのかと疑いたくなるレベルである。まあ首相や官房長官の答弁を聞いていると、自治体の担当者までがそれに倣うこともありうるかもだが。

とにかく「全国2位を誇る財政力指標を持つにもかかわらず、それを教育や福祉に使わずトヨタやJR東海など巨大企業の優遇ばかりに使う県政を、このさいぜひ変えましょう」というのが集会でのアピールだった。

「財政力指数2位」のソースは、上掲の総務省「都道府県のすがた2018 | ファイルから探す」中 “D 行政基盤” のExcelシートを開くと、左端のE列にある。2015年度の値だそうだ。

 

集会の中で聞いた言葉ではないが、「財政力指標2位」と聞いて、ははぁ、と思い当たったことがあった。

「大阪府を抜いて、日本第2の都道府県と言われたい」

という意識が、愛知県の官民にはあるんじゃないだろうか?

 

検索して報道を集めてみた。地価の最高額は、一昨年の2017(H29)年に大阪を抜いたそうだ。

最高地点 大阪を抜く 基準地価 名古屋商業地 5年連続上昇 :日本経済新聞

2027年のリニア中央新幹線開業を見据えた名古屋駅周辺の再開発の動きが、名古屋市の商業地の地価を押し上げ続けている。国土交通省などが19日発表した17年7月1日時点の基準地価は、名古屋市の商業地で5.3%の上昇と5年連続のプラスとなった。愛知県内の最高地点「大名古屋ビルヂング」が大阪府内の最高地点を抜く「名阪逆転」も起きた。

 

県内総生産は去年、大阪府を抜いたとのこと。

都道府県版GDP、大阪は3位に転落 愛知に抜かれる:朝日新聞デジタル

 国内総生産(GDP)の都道府県版「県内総生産」で、東京都に次いで全国2位を維持してきた大阪府が初めて愛知県に抜かれた。GDPの算出基準が変わった影響が大きいという。

 大阪府が9日に発表した2015年度の府内総生産は39兆1069億円。前年度比2・4%増だが、愛知県の県内総生産39兆5593億円と比べると、約4500億円下回った。

 

オフィス賃料も大阪を抜きそうだとの報道があり、この記事は紙面で読んだ記憶があった。

リニア効果で名古屋が脱・3番手? 大阪にオフィス賃料肉薄、「GDP」は逆転:街が変わる:中日新聞(CHUNICHI Web)

 二〇二七年を目指すリニア中央新幹線の開業に向け、大都市としての名古屋の価値が高まっている。 大阪に大きく水をあけられていたオフィス賃料は、その差が二十年前の十分の一以下に縮まった。

 

愛知県が大阪府に追いつき追い越し、追い越した差を決定的にしようと思えば、トヨタやリニア新幹線のJR東海をサポートしようというのは、わりと安易に思いつくアイデアではある。

現知事は今は「オール与党」だが、初当選したときは地域政党「減税日本」の名古屋市長と同志的関係にあった(今は仲違いしている)。「減税日本」は地方選挙で「日本維新の会」と選挙協力を行うという。つまり新自由主義の色合いが濃く出ている。ならば余計にそうなるだろう。

 

しかし財政力指標にしろ都道府県GDPにしろ、本来は住民である県民の幸福に奉仕するためのものであって、県民に我慢をさせて、県民の QOL を削って、それらの値を増やそうというのは本末転倒というものではないだろうか?

だが「打倒、大阪!」というスローガンがわかりやすければわかりやすいほど、そのための巨大企業支援というのが安易であれば安易であるほど、それに反論するのは難しくなるようにも感じる。

 

ここで想起するのは、今さんざん報道されているカルロス・ゴーン元会長以前の日産である。当時の日産が見ていたのは、消費者でもなく、従業員でもなく、株主でもなく、ライバルのトヨタだけだったと言われる。その結果、トヨタに対抗して身の丈に合っていない製品ラインナップを無理に揃えるなど不合理な経営を重ね、破綻寸前に陥ったと言われる。経営危機の原因は複合的でそれだけではないだろうけど。

大阪の低迷の原因は、これも複合的でさまざまなことが言われるけど、いわゆる「関西家電ご三家」のうち2社までが身売りに追い込まれたことに代表されるような、産業の苦戦の影響は否めまい。

愛知を支えていると言われる産業だって、盤石と言えるのだろうか? 「電子立国」を自称した時代に、日本のエレクトロニクス産業のここまでの苦戦を予想した人は、多くはあるまい。例えば「リニア大丈夫か」という危惧の声は少なからず上がっているのに、肩入れし過ぎは身を滅ぼすことにつながらないと言い切れるのだろうか?

念のためにつけ加えると、リニア自体はやればいいと思う。あくまでJR東海の自力で。

 

と言ってみたところで、「自治体が地元産業を支援しなくてどうする?」という反論が来ることは容易に予想されるな。

「そもそも自治体と産業は役割が違う」

「自治体が教育・福祉予算を抑制して産業支援を重視するのは、今日の子どものパンを取り上げて、明日稼いでくれるだろうと大人に与えるようなものではないだろうか? パンを与えた大人が、明日本当に稼いでくれるのか?」

「大人は本来ほうっておいても稼いでくるべき存在であって、子どものパンを取り上げること自体おかしいのではないか?」

「財政力指標が劣悪でも全国2位と優良でもおあずけされるのであれば、子どもはいつまで待ったらパンが食べられるのか?」

と再反論してみたらどうだろう? 反対意見を持つ人に届いてくれるだろうか?

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