しいたげられたしいたけ

空気を読まない 他人に空気を読むことを求めない

映画『主戦場』を観に名古屋シネマテークというミニシアターに行った

出演者が映画監督を訴えたりして話題になっていた映画だが、名古屋の封切り時には見逃していた。アンコール上映があるというので、観に行った。

digital.asahi.com

 

上映館は名古屋シネマテークという老舗の独立系ミニシアター。以前にも一度来たことがあるが、自ブログ検索したら なんと11年も前 だった! 「映画」タグを使うのも 4ヶ月前に『ボヘミアン・ラプソディ』を観てきた とき以来だし。たいした映画好きじゃないからだろう。

 

本作監督のミキ・デザキ氏は

明確な「答え」を持たず取材を始めたため「双方の主張を聞くうちにどちらが正しいかわからなくなり、頭の中が『戦場』のようになって苦しんだ」時期もあった。 

慰安婦映画、異例のヒット ドキュメンタリー「主戦場」、全国44館に広がる:朝日新聞デジタル より

とのことであったが、完成した作品においては、明快な結論が下されているようであった。

すみません、以下いわゆる「ネタバレ」が多数含まれます。

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例えば衆院議員の杉田水脈氏はカメラの前で、「従軍慰安婦問題に関しては、元慰安婦の証言しか証拠がない。また証言は首尾一貫していなくて信用できない」と主張する。

少し後で、米国グレンデール市に従軍慰安婦像が建てられたとき、同市在住の日系人がいじめられたと杉田議員が国会質問に立つシーンが流される。

元グレンデール市長は、そのような事実はないときっぱり否定する。同市職員に問い合わせてもらってもいいとまで言い切る。

インタビュアーに「日系人がいじめられたとする根拠は」と尋ねられると、杉田議員は明らかに動揺したように視線を左右に揺らせながら、知人からそのような証言を得たというあやふやなことを述べる。

 

例えば「新しい歴史教科書をつくる会」副会長の藤岡信勝氏は、「国家はどんなことがあっても過ちを認めてはならない、謝罪してはならない」と主張する。

その映像にかぶせて、1988年に当時の米レーガン大統領が「市民の自由法(英語版)」(日系アメリカ人補償法)成立を受けて、太平洋戦争中に強制収容された日系人に対して謝罪したドキュメント映像が流される。

 

例えば元タレントで米弁護士のケント・ギルバート氏はじめ右派とされる論客は、従軍慰安婦問題に日本国政府側の違法性がなかった根拠として、米国政府が7年の年月と3000万ドルの公費をかけて調査を行ったという IWG(各省庁作業班)の2007年最終報告書において、強制連行など慰安婦制度の犯罪性を示す証拠が一点も示されていないことを挙げる。

ここで、数年前まで「ネクスト櫻井よしこ」として保守論壇で注目を浴びる論客であったが、自陣営の主張に疑問を抱くようになり転向した「元歴史修正主義者」という女性が登場する。

彼女によると、IWG2007年最終報告書に実際に目を通したところ、同報告書はナチスドイツの戦争犯罪の解明を主目的としたもので、同報告書から慰安婦問題に関する証拠を探すのは「キッチンでソックスを探すようなものだ」と断ずる。

 

右派論客と言えば彼らは、米国における慰安婦像設立などの運動に対しては、中国から多額のカネが流れていると判で押したような主張を繰り返す。

「元修正主義者」の女性によると、IWG最終報告書に慰安婦の証拠がないと言い出したジャーナリスト(?)には、「ネクスト」でなはい「元祖」の櫻井よしこ氏らと関わりのある団体から、6万ドルと言われる「調査費」が支払われたとのことであった。

映画では櫻井氏へのインタビューで、この件に関して直接質問している。回答は「お答えは差し控える」の一点張りだった。

 

つまり、ネット語でいうところの「ブーメラン」の連発だったのだ。もちろん約2時間の上映時間の中では、それ以外の様々なテーマに関しても検証が行われていたが。

 

終盤の見どころは、「日本会議」の設立者の息子であり、安倍首相、麻生財務大臣ら現政権の中枢と、右派論客を結びつけるキーパースンとされる、外交評論家の加瀬英明氏が登場するところだろう。名前は辛うじて記憶に引っかかっていたが、どのような主張をしている人なのかはよく知らなかった。

とにかく驚きの連続だった!

「まさかそんな言葉が出てくるのか?」と思わざるを得ない発言が、次々と繰り出された。「いくらなんでも今のは聞き違いだよね?」と思った箇所に至っては、おそらく映画の製作者側もそう思ったのか、音声を二度繰り返して流していた。聞き違いではなかった。どうしようかな、その部分、書いちゃおうかな? これまでの部分がネタバレだとすると、今回はあまりにもネタバレが多くなりすぎてしまうから、やめておこう。

 

監督はじめ製作者サイドが「中立」ではないように、私もまた「中立」ではない。弊ブログは「自称中立」や「どっちもどっち」という態度を採らない。

右派とされる論客たちの主張が次々と覆されていくさまは、正直痛快であった。

だがしかし、思い返してみると彼らの主張は「詭弁」というべきものばかりである。

加瀬氏の主張に至っては、支離滅裂、妄言と言うしかない。

だがなぜそのような主張が、日本では幅広い支持を得てしまうのだろう?

言っちゃ悪いが加瀬氏のような人物が、どうして政界と論壇をつなぐ重要なキーパースンの立場にいられるのだろう?

 

もっと言うと、あのような「詭弁」で丸め込まれてしまうか、または「(きっと)どっちもどっち(に違いない)」「(だから)触らないでおこう」と議論を避けるのが大多数であろう日本人の論理力、ディスカッション能力に、心細さを感じてしまう。

特に若い層が心配だ。映画中の街頭インタビューで従軍慰安婦問題に意見を求められた若い人たちが、一様に戸惑いを見せ「知らない」という意味の回答を返す様子は、直接比較はできないかもだが米国のどこかの大学キャンパスで否定論に対する意見を求められた学生たちの「(否定側の主張に)根拠があるのであれば」と即答する様子とは、やはり差があるように感じられた。

米欧の教育は、幼児期から大学院に至るまでディスカッションが主体である。一方日本では、遅ればせながら文部科学省が「アクティブ・ラーニング」などと言いだして相互学習を重視しだしたことは少しばかり知っているが、昔ながらの教師の意図の忖度、テストであれば出題者の意図の忖度から、どの程度抜け出しているか疑問である。

杉田水脈氏は映画の中で、「中国や韓国は技術力ではとうてい日本には敵わない(だから従軍慰安婦問題をでっち上げている)」という意味のことを語っている。もし直接対面して議論しろと言われても、まともに反論する気も失せるレベルである。同氏の頭の中には、5Gや半導体世界シェアのデータは入って行かないのだろうか。

日本の「空気を読んで(それも国内限定の)」議論を避けたがる習慣と、その結果として論理力やディスカッション能力の足腰が鍛えられないことが、技術力はじめ産業の国際競争力の急速な相対的低下の一因になっているのではないかと杞憂するのは、心配性が過ぎるだろうか?

 

今回の拙記事では、記憶を補うために、館内で売っていた公式パンフレット(700円・税込み)と…

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id:SPYBOY さんのブログの記事…

spyboy.hatenablog.com

 

それに リテラ さんの記事を参考にさせてもらっています。

lite-ra.com

 

あと自分の思い出のために、スマホ写真を何枚か貼っておこう。思い出って、遠くないんだからもっと行けよ。

シネマテークが入っている今池スタービル。いつ行くの? 今いけ、なんちて。

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チラシで埋まったビル廊下の、雑然たる雰囲気いいなぁ。

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シネマテークにおける『主戦場』アンコール上映は8月2日までで、上映開始は7/13(土)~19(金)が17:10、20(土)~26(金)が10:40、27(土)~8/2(金)が17:50だそうです。

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シネマテーク向かいの大衆食堂。

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ちょうどお昼時だったので「本日のサービス品」なる味噌カツ定食をいただいた。850円(税込)。

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