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大森信也他『施設で育った子どもの自立支援』(明石書店)

久しぶりの書評記事です。読んだのは少し前だったのですが、書籍寄贈の旅シリーズとからめて書評を上げようかななどと考えているうち、ずるずると時期を逸してしまいそうだったので、単独の記事にします。書籍寄贈の旅シリーズは毎回書くことがいっぱい出てくるので。 

子どもの未来をあきらめない 施設で育った子どもの自立支援

子どもの未来をあきらめない 施設で育った子どもの自立支援

 

そもそも書籍寄贈の旅シリーズは、思い出すのも苦痛な(しかし決して忘れてはいけない)児童虐待死のニュースを受けて、居ても立ってもいられぬいたたまれない感情に襲われた。それで、ちょっとでも自分にできることはないかと考え、民間シェルター立ち上げ中のブロガーさんの、もう一つの活動である書籍寄贈に勝手に協力すれば、わずかではあるが支援につながるのではないかと考えたことが始めたきっかけだった。民間シェルターは、公営の児童養護施設の補完的な役割を果たす施設である。

だが私は、養護施設に関する知識がほとんどなかった。書籍から得られる知識には限界があるが、まずは書籍を手に取ろうと思った。

 

著者のお一人は、理不尽な暴力に殉難された方である。

「常に子どもの権利を」 温厚な施設長、なぜ刺殺?:朝日新聞デジタル

クライストチャーチのテロ事件に際しての、アーダーンNZ首相の「 大勢の命を奪った犯人の名前ではなく、命を失った大勢の人たちの名前を語ってください。」という言葉を思い起こさずにはいられぬところであるが、この事件に関しては、犯人も施設出身者だったとのことで、「なぜ?」という疑問もまた拭うことはできない。

 

上掲書は、決して読みにくい本ではなかった。

まず、入所者の言葉が3~4ページの散文詩風に紹介される。一部を引用すると、こんな感じだ。

家にいたときは、

父からの暴力を受ける毎日だった。

暴力を受けていたことしか記憶にない。

中1で施設に入ってからも友達はできず、誰ともうまくいかない。

気付くと、かんしゃくを繰り返し起こした。

 

施設で厄介者になって、母のところに戻ったけど、

安心して生活できる環境では全くなかった。

 

それからいろんな場所を転々とする。

うまく物事が継続できたことが、一度もないのはどうしてだろう。

 上掲書 P28~29

それを受けて、「かかわりのヒント」と題された2~3ページの解説が続く。

折々に、共著者として名前が表示されている3名のコラムが差し挟まれる。

 

散文詩風の部分には、サブタイトルとタイトルが付されている。先の引用部であれば「●社会的孤立 ひとりは嫌いなのに…」といった具合である。

サブタイトルだけを抜き出して並べると「●親への思い、家族関係」「●知的障害・発達障害、障害者手帳」「●自殺願望、自殺企画」「●大学進学」「●妊娠・出産、生い立ちの整理」「●性的虐待」「●服役、身寄りなし」「●学力問題、学習支援」「●犯罪、社会的孤立」「●デートDV」「●高校中退、性風俗」…と、未成年の直面する可能性のある困難が、まさに凝縮された様相を示している。凝縮されたうえで、さらに増幅されているといった感もある。

理由は明白である。彼ら、彼女らには、なんらかの困難に直面したときに無条件で味方をしてくれる存在がいないのだ。肉親のような。

 

さきの引用部を受けた「かかわりのヒント」には、次のような言葉が書かれている。

「どんなことがあっても、私たちはあなたを見捨てない。遠慮しないで何でも相談してほしい。できる限りのことを一緒にやっていきたい」。言葉だけではなく、子どもが実感できるようにするために、施設の生活そのものを一つ一つ見直していく必要があるかもしれません。

P31~32

職員の方々の努力には、心の底から頭の下がる思いである。

しかし、おびただしい数の入所者の肉親代わりを、職員だけが担うわけにはいくまい。理想論に近いかも知れないが、できるだけ多くの人が自分のできる力を貸せるような状況を構築する道を探ってゆくべきと思われる。

現に、この引用部には次のような記述が続いている。

 また、施設や職員とのつながりを土台にして、地域の方々、関係機関、ボランティア等、様々な場所や人とつながっていくことが、社会的孤立を防ぐことに役立つはずです。

P32

10年以上前になるが、半年間ほど週一で障害者向け授産施設のボランティアをやったことがある。もちろん養護施設と授産施設は違うのだけど。

授産施設, ボランティア の検索結果 - しいたげられたしいたけ

「何でもするぞ!」と勢い込んでいたところ、施設でやっている軽作業のほかに、パソコンの初期化やソフトのインストール、無線LANの設定などをおおせつかったことを、冗談めかして書いた。だが今にして思えば、一介の支援者としては「できることをやる」という意味でいいセン行っていた のかも知れない。その後、あそことはご縁が切れてしまったが、そのうちまたどこかに押しかけることを考えるべきだろうか?

 

問題は他にもいっぱいある。言い尽くされたことだが、人も予算も絶対量が足りないのだ。こういうのって、どうしたらいいんだろうね?「選挙に行け」ということか??

 

なお「はてなブログ」ではミィナ(id:mi_monsto_baka)さんが、虐待を受けていたことや児童相談所や養護施設における自らの体験を綴られていることを知り、読ませていただいています。リンク失礼します。

www.rococoro.xyz

知らなかったことはいっぱいあったのですが、ほんの一つだけ。生活保護は収入があると支給額が減らされるけど、施設は寄付やプレゼントがあっても予算が削られるということはないんですね。タイガーマスク運動には意味があったということで。

 

もう一つこの機会に、やはり「はてなー」でもある id:ncc1701 さんが、ツイッターで紹介されていた海外 CM の Youtube を、ツイッターのほうではリツイートさせていただいたんですが、こちらにもいくつかリンク貼らせていただきます。

ツイッターのリプライをたどると、もっと出てきます。

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